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もりおか映画祭特別企画 大友啓史&達増県知事 緊急対談 いわての復興とその後

「もりおか映画祭2011」のゲストでもあり盛岡出身の映画監督・大友啓史氏と、岩手県知事・達増拓也氏が対談。
震災後の岩手の復興のプロセスと復興後の岩手が目指すべきものは何か、また映画が復興に果たす役割とは何か、語り合っていただきました。

大友監督:今、情報が多いじゃないですか。テレビにしてもネットにしても主体的に情報にアプローチするってことをこちら側が選んでいかないと、意外と見つけられないことっていっぱいあるじゃないですか。そういう情報環境の中でこちら側が、岩手からの情報をどういうふうに埋もれずに、ごちゃごちゃした情報環境を乗り越えて、生き残らせて、一番目立つところに持っていくかそういう手法というのは、どうしたらいいのかなって思ったりするんですよね。

達増知事:クリエイターの世界とこの岩手県、両方に足場を持っているような方が活躍する局面じゃないかと思いますけれども。

大友監督:マンガなんかも面白いですよね。あれだけ50何人、本当に岩手の方がいるとすると、知事の知っている範囲内でいうと、彼らボランティアで入っている方も何人もいるじゃないですか。そして少しずつ自分の作品も書きあげているじゃないですか。ああいうのをどういうふうに取り込んでいくかというのもありますよね。セールスマンに是非なって頂きたいな。

達増知事:「コミック岩手2」も今作る企画を進めているところで、津波、震災関係のことを書いて下さいという依頼の仕方ではなく、岩手を舞台にしたものなら何でもいいです、岩手に関係あるものなら何でもいいですというような感じでお願いしてるんですけども、多分、結果としては津波震災に関係するような作品が描かれるんじゃないかと思っていますが、そういうのをコーディネイトするようなことを行政としてやった方がいいなと思っています。

大友監督:それは、知事ご自身が陣頭に立つんですか?

達増知事:岩手県知事責任編集という帯が第一集には付いてるんですが、やはり責任をもって編集したいと思います。

大友監督:マンガ大国にもできますもんね。何かいりますよね、どうアプローチしていくかということですよね。

達増知事:マンガそのものの振興、マンガ家の振興というのも念頭に置いていて、南部杜氏みたいなそういう高度職能集団として、「岩手マンガ家」みたいな南部杜氏に匹敵するようなグループとして認知されればいいなと思っていて、南部杜氏も岩手に残って酒造りしている人もいれば、日本中あちこち出かけて酒造りしている人もいるから、岩手でマンガを描く人もいれば、日本中あちこちでマンガを描く人もいて、それはマンガに限る必要はなくクリエイターであれば映画監督でもいいわけですし、そういうことを育む素地がいが岩手にはあると思いますね、宮沢賢治的な雰囲気とかそういうのが。

大友監督:一時期アイデアとして出ていたんですけれども、映画祭のコンセプトという時にそいうスタッフ側とか、そっちに陽を当てるという方法もありますよね。作品というよりも。例えば、撮影監督栃沢さんにスポットを当てた映画というのを二年前位にやってたんですけども、その辺にスポットを当てながら、ただやっぱりそこには映画が好きな人は来るけど、そこからどう一方でね、どう広げていくか、もう少し広い広がりを持つためのアイデアがやっぱりいるんだろうなという気はするんですよね。

達増知事:『スターウォーズ』を観はじめて、それでどういう人達が作っているのかに興味が移っていって、特撮の人達、そすると列伝のようなものが出版されいたりしてますから、ああいう方に関心がいったりどういうシステムで作っているのか、社会学的な関心にいきます。

大友監督:達増さんの映画のベストは何なんですか?一番好きとか二番、三番は。

達増知事:ベストは色々な切り口で総合的には『スターウォーズ』シリーズが好きなんですが、『マイ・フェアレディ』も、英語を生業とするような人生、外交官をやっていて、英語というテーマであの映画がもの凄い好きなんですよね。

大友監督:『スターウォーズ』ですか。

達増知事:ええ。あとはその時によって違うんですけどね。映画は食べ物みたいな感じで、今まで食べた中で一番何が美味しかと言われてもパッと浮かばないですね。あれも美味しい、これも美味しいという感じですね。

大友監督:あ、そうですか。でも『スターウォーズ』、面白いですね。達増さんが『スターウォーズ』って。

達増知事:そうですね。

大友監督:僕としては、今の時代色んな情報が多いし、やはり若い人達が情報の捕まえ方の方法も上手になっているし、その中で映画というオールドメディアがどうやって生き残るかとなった時に、結局ヒントは、アナログ的な感覚の中にあるような気がするんですよね。デジタルな機材、最新のハードを使って映画を撮りつつ、描くものをいかにアナログなところに還元していくかということが一方にあると思っていて。「寅さん」の話じゃないけれども、伝わるのは、「痛い」とか「悔しい」とか「嬉しい」とかシンプルなものが一番伝わるなって気がしているんですね。ということは、このような情報の溢れる中で生き残っていくものというのは、「痛い」とか「苦しい」とか「嬉しい」とか「楽しい」「悲しい」という個性の見える顔、個人の感情の見えるアプローチであるということを思っているんですね。でも人にそういう顔を見せるということは、本当はすごく親しい人にしか出せないじゃないですか、本音の部分の嬉しいとか悲しいとか辛いとか、それが強ければ強い程、きっと表現としても強いものが生まれるんですが、それを人に話すのは難しいし、恥ずかしいし、照れくさいしということで言うと、ヒントとしては岩手なり東北なりの本当の顔というのをどういうふうに世間に対して、照れずに見せていくのか、見せる形にしていくのか、その辺がもの凄く大事だと思っているんですね。原始的な感情表現っていうのが何かというのを地元の方から発信されたものを見たいというのがあるんですよね。それに惹かれて、色んな人達から今が大変だから何か応援するというのではなくて、忘れ去られたり記憶の中で風化され、その経験が遠くなった時でも、その土地ならではの原始的な感情表現に魅力が発見できてさえいたら、みんなが集まってくると思うんです。そういうことを色々教えて頂きながら、僕自身も探していきたいなと思っているんですけども。

達増知事:先日、テレビで『ゴールデンスランバー』を観たんですが、あれは仙台で、ああいう映画を作って頂いた仙台が羨ましいなと思ったんですが、仙台だからリアリティーがあるという感じで、同級生同士のその後の付き合いとか、色んな人が親切にしてくれるとか、仙台ゆえにリアリティーがあるという、主役が仙台という映画だったなと思って観ていました。ああいうのが岩手から発信できればいいなと思いました。

大友監督:そうなると地元在住の強烈なアピール性を持つ個性的なクリエイターなのか、言い方が悪いのですがアジテイター(扇動家)なのか、声を挙げられる人、一人なのか二人なのか三人なのか、なるべく多くいた方がいいと思いますが、必要ですよね。

達増知事:後藤新平さんとか過去の人でもいんだと思いますし、そういう過去まで遡ると岩手は宝庫なので、過去の歴史上の人物の叫びを今でも共感できるんじゃないかと思います。

大友監督:そういう方をなるべくね、取り上げられるような、僕もやりたいことがいっぱいあるんですが、なかなか一人では大変なので、何人かいるといいですよね。佐藤嗣麻子さんもいますよね。

達増知事:サロンみたいなのがあって、そこでみんなで連携しながらやっていくといんでしょうね。

大友監督:そういう回路があって知事とかに後押しして頂いて、それをどういうふうに本当に、極端にいうと、情報環境に埋もれさせずに突破していくかということなんですかね。

達増知事:映画には本当に期待しています。実は祖父が戦前、岩手日報に映画評論を掲載しておりまして、祖父にも恥ずかしくないように映画を大事にしなければならないなと思っています。

大友監督:プレゼンテーションというのはすごくいかがわしい言葉ではあるけれど、プレゼンテーション能力というのがないと良い物を作っても生き残らない時代なんだなって凄い感じるんですよね。誰かに見つけてもらうことを待っていたのでは、永遠に誰も気づいてくれないというか。この時代の、情報の渦に埋もれてしまうというか。上手くプレゼンテーション能力を育てるようなことということを、自分の今までのプロセスも返り見て、機会を提供できないかなと思ったりもしますね。

達増知事:大友映画塾?

大友監督:いやあ、まだ僕は半歩映画の世界に足を突っ込み始めたばかりですからむしろ誰かに教えてもらいたいくらいですね。(笑)


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