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最終審査選評

審査員長 大友 啓史


2011年10月21日撮影

審査員 近衛 はな

 最終選考に残った三作品を拝見し、審査に臨ませていただきました。三作品それぞれに優れた点が異なり、どんな“ものさし”で作品の価値をはかるのかということが問題となりました。
 「Three Eleven 記憶の中で」は、被災者のインタヴューで綴られた作品。記憶を物語る言葉は重く、心動かされる内容でした。「素材」という点では最も優れた作品であったかもしれません。しかしナレーションによる説明が過多であること、インタヴューの声が十分に聞き取れないこと等が、総じて作品に内向きの印象を与えてしまいました。 
 「記念日」は、作者が被災した実の叔父を追ったドキュメンタリーです。カメラのレンズをのぞく作り手の気持ちが真っ直ぐに感じられ、好感のもてる作品でした。企画の切り口も独自で、五分という短い作品でありながら胸に迫るものがありました。しかしその割に呆気なく終わってしまったという印象が否めません。じっくり撮影し、構成を練ればとてもよい作品になったと思います。
 「3.11からNext〜ある歯科医の挑戦」は、復興支援に奔走する遠野市の歯科医を追った作品です。歯科医の言葉と活動はなるほどと思わせる智恵にあふれ、地方からの情報発信の在り方を考えるうえでもヒントを与えてくれる内容でした。ドキュメンタリーとしては、やや客観性を欠いているという難点はあるものの、前向きな熱意を感じる作品です。多くの人に観ていただきたいと思います。
 震災から七ヶ月。今だから撮れるものがあり、今はまだ撮れないものもあると思います。映像には何ができるのか、「映像の力」について考える機会を与えられたことに感謝いたします。作品をお寄せ下さった皆さま、ありがとうございました。

審査員 菅原 和彦

 「3.11からNext〜ある歯科医の挑戦」は構成に優れており、ボランティア活動の中心となっている歯科医の活躍がよく分かる。オフコースのメンバーだったミュージシャンを登場させるなど興味深い要素を盛り込み、深みを持たせた。  
 ただ、歯科医がなぜこれほどまで情熱を注ぐのか、葛藤や苦悩はどうかについてもっと迫ってほしかった。  
 4人に対するインタビューをまとめた「Three Eleven 記憶の中で」は、被災者が経験したつらさを如実に示し、訴えるものが多い。  
 特に、兄と恋人を失った陸前高田市の女性、両親と子ども2人を失った南相馬市の男性には胸を打たれた。対象者がここまで率直に打ち明けた記録は貴重だ。語る内容は深かったが、表現にもうひと工夫必要だったように思う。  
 「記念日」は想像力を働かせて鑑賞していたが、すぐに終わってしまった。伝え切れていない。もっと展開させたかった。

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